◆狸と褞袍(どてら)と豚汁と◆

 肥後の手鞠歌、「あんたがたどこさ?肥後さ・・・・・船場山には ・・・・・」
と歌われるこの街の狸達。丑三つ時の街外れ、家路を急ぐ車の灯りを
さして警戒するでも無く暗がりに処かまわず出没する繁栄ぶり、
この平成の世にどうした事でしょう?

 狸はもとより、今ほど観光のお客様の姿も目立たず、名所の桜並木もまだ幼木の頃、
お城の坂道を、髭面の若き紳士達が夜な夜な城下に繰り出しました。底冷えの夜
お目当ては湯気立ち昇る当店の“豚汁”なのです。二の丸跡に医学部が仮住まい、
勉学の合間に褞袍を羽織って背を丸め、昭和のお狸さながら(失礼!)ご来店された
のでした。最も古くからのご贔屓として、今でも“豚汁”が恋しいと、お立ち寄り
頂きます。
 お城観光のお客様、御幸坂(みゆきざか)を下られて、当店の“馬刺”を堪能さ
れたのち、通称“褞袍豚汁”を是非。
「煮てさ、喰ってさ、旨さがさっさ」とお勧めの太鼓腹。
左の挿し絵は我が“豚汁”の器三代です。
ひぃ〜、ふぅ〜、み〜、三つ共見覚えがお有りになる。
貴方様!やはり船場山のお生まれなのでは!